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施設訪問アドボカシー試行事業の進捗状況

5 施設訪問アドボカシー試行事業の進捗状況

児童養護施設の進捗状況

訪問アドボケイトの派遣
 試行事業は今年度夏から始まりました。施設には、週1回、2名のアドボケイトが訪問し、2時間程度滞在しています。遊び等を通しての信頼関係形成を基盤として、①苦情/意見の傾聴・②意見形成支援・③意見表明支援・④代弁を行います。あわせて、子どもの権利啓発、子ども参加やアドボケイトへの助言をもらう委員活動、自立支援計画への参加、虐待等の権利侵害の予防、施設職員への情報提供/助言・制度政策等の提言を行うことをめざしています。

 

2017年度の様子
 本年度は子どもの権利スタンプラリーや関係構築のための遊び、学年ごとに行う相談会<スペシャルルーム>、子どもからアドバイスをもらう子ども委員の会議を行っています。
 施設経験者のアドボケイトと市民アドボケイトに対して、施設や家庭のこと、学校のこと等を子どもたちが少しずつ語ってくれています。また中高生のワークショップでは、施設経験者のアドボケイトが大学進学のこと、就職活動のことなどを語り、子どもたちが積極的に質問をしました。施設退所者の進学率が低い中、教育への権利についても語りの中から理解してくれたように思います。
 また、アドボケイトにアドバイスをする子ども委員に9名が立候補してくれました。就任パーティーを行い、委嘱状を照れながら受け取ってくれました。今後、子ども参加による訪問アドボカシー活動づくりや施設の質の改善につながっていくことを期待しています。
 職員からは、「子どもたちは嬉しそうに子ども委員会やワークショップに行っている。」との声を寄せていただきました。また、この活動を導入したことで、施設に義務付けられている「第三者評価」で高い評価を得たそうです。施設にとっても意義がある活動にしていくためにこれからも頑張っていきたいと思います。

 

 今後の展望
 施設などで暮らしている社会的養護の子どもに対して、訪問アドボカシーのモデル事業を2019年から実施することが、厚生労働省の検討会が昨年出した「新しい社会的養育ビジョン」に明記されています。この活動を単に試行事業で終わらせるのではなく、全国で制度として展開され、声を上げにくい立場の子どもたちの声が社会にしっかりと届くようにしたいと私たちは思っています。まだまだ始まったばかりの活動ですが、その目標に向かって子どもたちの声を聴きながら進んでいきたいと思っています。
(栄留里美)

~アドボケイトの声①~
春ですね。春は年度も代わり、中学や高校に進学していく子どもや、児童養護施設を卒園する子どもなど、新たな1歩に進んでいくなーと思いながら、私も中学2年生で施設を卒園したことを思い出します。

2017年の夏ごろから、とある児童養護施設へアドボケイトとして訪問しています。私自身「アドボケイト」という言葉をようやく覚えて、少し理解できたんじゃないかなと最近思っているところで、私が理解しても子どもたちにどのように伝えるのがいいのかは探り探りな状況です。訪問から半年で、最近名前と顔を覚えてもらえたかなっというぐらいです。訪問するとトーテンポールのようによじ登ってくるし、おんぶと抱っこで人間ホッカイロで温めてくれます。

子ども達がだんだん慣れてくると、小学生からは「おとな気ない。おなとなんやから我慢して。」「おとなやのにそんなんも知らんの」「おとなやのに変な人~」って言われてヨシヨシと心の中でガッツポーズをしています。

そんなアドボケイトがどうして必要なのかは、これまで関わってきた社会的養護の子ども若者から話を聴いた時に「自分の意見を聴いてくれない」「話せない」「話しにくい」「おとなは聴いてくれない」「どうせムリ」「児相(児童相談所)は年1回に挨拶するだけやから話せるわけない」という発言が日常にあったことです。でもその裏側に「聴いてほしい」「ほんまは話したい」「この人やったら話せるけど」という声もあったことです。

今回の試行事業では、今までと違うおとな(児相や施設職員や学校の先生)との関わりです。そして試行事業なので期間限定ということで、限られた訪問の中で子どもにどれだけ寄り添え、アドボケイトとして成果が出せるのか難しさも感じています。これまでと違った角度から関わってくれるおとながいて、一緒に寄り添ってくれるという事を知ってもらう、信頼してもらうまでにもう少し時間と中身が必要だなと思います。

子どもたちにとってアドボケイトが日常の人のように組み込まれていけばいいなと思います。
(あらいちえ)

 

 ~アドボケイトの声②~
 国内では、前例のない中での取り組みという事で、子ども達の声をどの様に聴いていったら良いか試行錯誤をしてきたように思います。現在は、子ども達に寄り添いながら「耳を傾ける」という実践を、チームで取り組めているなと感じています。
 私たちは、子ども達にとって「役に立ちたい」との思いで関わっていますが、子ども達はどの様に感じているのでしょうか。今後、この活動における子ども達のフィードバックがとても楽しみです。
(中村みどり)

 

障害児施設の進捗状況

2-9月からアドボケイトとして2017年9月より2名のアドボケイトによって福祉型障害児入所施設への訪問活動が行われている。週1回の訪問活動に外出の機会を挟みながら、子どもとの関係づくりや、子どもと地域社会をつなぐ取り組みが重ねられてきた。併せて、施設職員の希望により、職員研修を定期的に実施しながら、権利擁護にかかわる意識の啓発活動にも取り組まれてきた。

他者の身体や生活に侵入するケア行為には、本人の主体性を脅かす契機がつねに潜在している。より多くのケアを必要とする障害児にとって、ケア役割をもたないアドボケイトによって思いが聴かれる機会は、主体性を醸成する機会そのものであろう。このような傾聴機能に加えて、子どもの権利の観点から施設の生活環境をモニタリングする機能もアドボケイトは担っている。半年間で認識された生活環境上の気になる事柄に、子どもの声を重ね合わせながら、施設職員にどのように伝えていくかを検討しているところである。

しかしながら、言葉に拠らない表現方法を有する子どもはどのようにして声をあげることができるのか。障害児者のアドボカシーに関心を寄せる人たちが直面してきた難題にアドボケイトも立ち並び、応答的関係のなかで子どもの思いを汲み取る実践が蓄積されつつある。

そのようにして汲み取られた子どもの思いの中には、「施設で暮らすことを自分自身が選択したのではない」というものも含まれているに違いない。そこで、本活動を進めるにあたっては、施設を地域に開くための回路を意図的に組み込むこととし、障害当事者、学生、支援学校の卒業生、子育て支援活動に取り組む市民が、施設内外で子どもと出会う機会を創ってきた。その都度「どこから来たん?」という質問が子どもから寄せられ、子どもの関心が施設の暮らしだけに閉じていないことがうかがわれる。子どもが抱いている、人としてのあたりまえの関心に応えるという点においても、第三者が施設を訪問することの意義が確認される。(鳥海直美)

 

~アドボケイトの声③~
 去年から障害児施設を訪問させてもらっています。初めての訪問の日、緊張でいっぱいだった私を見て、小さい子たちがすぐに集まってきて歓迎をしてくれました。その時こだわりのない接し方が、私の緊張感を徐々にほぐしてくれました。
子どもたちと過ごしていると、それなりの緊張関係があったり、喧嘩したりしていますが、誰もお互いのことを否定はしていないようです。職員さんから事前に聞いていた「子どもたちは寄り添いあっている」と言われたいたことばを思い出します。子どもたちは根っこの部分ではわかりあっているように感じます。子どもたちの気持ちを聴きたいと訪問していますが、様々な表現をする子どもたちから、今までとは違う方法で「声を聴く」ことを模索しています。これは私の未知の領域を拡げることだなあと思っています。子どもたちと過ごす時間は私にとって大切で貴重な時間です。
私はこの施設に訪問させてもらって、初めて子どもたちが地域社会から閉ざされたところで生きている現実を知りました。いくら施設が努力しても、施設だけではどうにもならない問題だと、改めて感じます。私も含めて社会全体が変わらないといけないことです。障害児者の現実を知ろうとしなかった自分がいたと思うと同時に、知る権利も奪われてきたんだとも思います。(内山洋子)

 

 ~アドボケイトの声④
独立アドボカシー研究プロジェクトにおいて研究調査に同行、その後、子ども情報研究センターで「地域子ども家庭アドボケイト養成講座」を受講して、障害児施設訪問アドボケイトとしての活動は始まりました。障害児施設でのアドボケイトの必要性を感じながらも、いざ、訪問するとなると、その役割が果たせるのか不安ばかりがつのりました。子どもたちは、わたしに声を聴かせてくれるだろうか、そして、その声を誠実に受けとめ、伝えることができるだろうか… 
訪問した施設では、多様な子どもたちとの出会いがあり、毎回、発見、学び、気づきの連続です。わたしをじゅうぶん過ぎるほど受け入れてくれていると感じる子どもたちなのですが、いったいわたしはなにを聴けているのか、どこに向かおうとしているのか、悩むことばかり。子どもたち、そもそも、聴いてもらいたいなんて思っている? そんな権利があることに気づいていないよね。まずは、わたしはなにをする人か、そして、子どもたちに安心できる生活や人との関係を求めていく権利があることをどうしたら知ってもらえるか。訪問し続けて、ここにいる子どもたちの声なき声に気づくのかもしれないし、表現や方法を見出せるのかもしれません。
先走って、気になることはたくさんあります。それを安易に子どもの声や表現と結び付けてしまいそうになるときがありますが、子どもの力を信じて、アドボケイトにできることを探っていきたいと思います。子どもたちから元気をもらい、スーパービジョンに支えられています。(奥村仁美)

 

障害者施設の進捗状況

2017年度上半期は、障害児施設での訪問アドボカシーに取り組みつつ、障害者施設での実施計画をデザインし、下半期は障害者施設での訪問アドボカシー実施のための施設との協議及び事前訪問に取り組んだ。

当研究プロジェクトにおいて、児童養護施設分野・障害児施設分野については、当該研究班が先行研究で過去に調査協力を得ていた施設に依頼し、本研究班と施設との間にある既存の信頼関係の上に、受け入れが決定していった経緯がある。一方、障害者施設分野については、同様の関係性をもつ施設等はなかったため、まずは研究協力者が関与している障害当事者団体と研究活動について方針協議し、施設選定にあたっての示唆や推薦できる施設等の情報を得ることから着手した。推薦を得た複数の施設の中から、分担責任者およびアドボケイトの訪問活動が現実的に可能な施設を選択し、該当施設に連絡をとり、訪問し研究事業を説明した。施設および法人でご検討いただいた結果、「施設利用者の権利擁護」と「職員の資質向上」にご期待いただき、訪問活動の了解を得ることができた。

2018年1月には事前訪問に向けて具体的に協議し、目的や課題、運営実務等について確認作業に着手した。2月から事前訪問を開始し、利用者・職員への説明ツールを活用しつつ、4月からの事業実施に向けて事前訪問を継続している。(吉池毅志)

 

子ども家庭福祉学の視座から

 私が児童養護施設で児童指導員として働いていた昭和58年から平成9年の頃、すでに親からの虐待を受けていた子どもたちや、また当時のサラ金の流行による家庭崩壊の中で、暮らす場所を失った子どもたちが施設にやってきていた。そんな時代から20年以上が経ち、施設における子どもの権利についての意識は、平成に入ってから以降、ずいぶんと高まってきたと感じているが、依然と施設にやってくる子どもたちは、親や家庭に複雑な思いを抱えて暮らしている。子どもは親が提供してくれる暮らしの中でしか育つことができないとしたら、その親の家庭をしっかりと支える必要がある。また一方で、親の暮らしに期待できない子どもたちも散見され、そこでは子ども自身がしっかりと自立していける力を育む必要がある。そのためには、子どもがおとなに信頼を寄せ、自身の思い(気持ち・考え・希望・苦情)を聴いてもらえる体験を積むことが基盤となる。1990年11月、カナダ・オンタリオ州政府コミュニティ・ソーシャル・サービス省子どものためのサービス諮問委員会報告書『まず、子どもを』を作成した諮問委員会委員長のコリン・マローニ(Dr.Colin Maloney)博士は、子どもたちにとって、誰かが気にかけてくれているということ、大切に思ってくれているということを感じる人間関係の構築こそが重要であると述べている。子どもを主体として、その思いを中心に置き、親や家族、児童相談所、施設がさらに協働しながら、子どもたちの幸せな人生を再構築することが求められているが、その媒体としての独立訪問アドボケイトの役割は大きいと考えられる。(農野寛治)

 

母子保健の立場から

以前、シカゴのスラムで若年妊婦の支援を行っているドゥーラたちの活動DVDを見たことがある。お産に立ち会う年配女性たち(ドゥーラ)が、勝手の自分と同じ体験をしている10代の未婚の女性たちに、妊娠中から寄り添い、信頼関係を培い、一緒にお産を乗り越えていくという内容だった。一軒一軒の家を訪問し、隠れている女性たちを見つけ出し、ドゥーラセンターに来ることを呼びかけ、センターではお産や健康についての情報提供のみならず、食事や衣類、赤ちゃん用品の提供も行っていた。

その中でドゥーラが、若い母親におなかの子どもがなんと言っているか尋ねる場面が何度も出てきた。目には見えないが確かにそこにいるおなかの赤ちゃん。そのベビーがなんと言っているか、何を若い母親に訴えているかを尋ねるのである。若い女性たちはなかなか答えることができないが、最後には恥ずかしそうに「・・・ていってるみたい」と小さな声で呟いてにっこり笑う。そこでドゥーラのいう一言が私の中に深く刻まれている。

「子どもの声をキャッチできないと母親にはなれない…」

私はここに母子保健から始まるアドボカシー活動の原点を見るのである。

(久佐賀眞理)

    

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